昨年末から始まった高校サッカー選手権も早いもので、既にベスト4が決まっています。来る1月11日(土)には、富山第一vs四日市中央工と星稜vs京都橘の準決勝が行われます。
富山第一vs四日市中央工は、今大会通算4得点で得点王争いのトップを走る富山第一FW渡辺仁史朗と、準々決勝にてロスタイムゴールを決めた四日市中央工DF後藤凌太に注目ですね。
また、星稜vs京都橘は、準々決勝のPKで驚異の3連続セーブを見せた星稜GK近藤大河と、インターハイ優勝校の市船から2得点を挙げた京都橘FW小屋松知哉から目が離せません。
毎年数多くのドラマが生まれ、多くの日本人を魅了する高校サッカーですが、今回はそんな高校サッカーをより理解し楽しみたい方におススメの4冊を紹介します。
走り続ける才能たち
著者である安藤隆人氏は、銀行員として働きながらもサッカージャーナリストになる夢を捨てきれず、休日は全国のサッカー場を訪ね、本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、内田篤人ら、当時高校世代だったサッカー少年たちを取材してきました。
みな、今では日本を代表するサッカー選手ですが、高校時代はもがき苦しみながらも自分を信じて前を向きながら走り続けていました。安藤隆人氏は、取材を通して、そんな彼らの姿を間近で見ながら多くの言葉を交わしています。
本書では、彼ら将来のスター選手たちの喜びや悔しさ、苦悩などがリアルに描かれていて、一人一人がとても身近に感じられました。
ちなみに、安藤隆人氏は彼らの一流の努力、輝きに触発されて、ついにはフリーサッカージャーナリストへ転身します。
P242より抜粋
彼らが第一線で活躍していなければ、もしかしたらサッカージャーナリストとしての僕は、存在していなかったかもしれない。それほどまでに大きな刺激を何度も受けてきたし、今もなお、僕に刺激を与え続けてくれる。
全国のサッカー少年にはもちろん、サッカーに限らず、これから何か新しい一歩を踏み出そうとしている者にも勇気を与えてくれる一冊です。
高校サッカー監督術
サッカー選手が大成するまでには、その親から始まってチームの監督やコーチなど、多くの大人たちが関わることになりますが、中でも高校サッカーの監督は多大な影響を与える人物の一人と言えるでしょう。
現在活躍しているプロサッカー選手の中にも、「高校生時代にこの監督に指導を受けたからこそ、ここまでの選手になれた」という者は多いのではないでしょうか。
本書では、滝川第二の栫裕保監督、星稜の河崎護監督、流経大柏の本田裕一郎監督など、名将と言われる7人の高校サッカーの監督への綿密な取材を通して、その個性的な指導法やサッカー哲学を紹介しています。
P268より抜粋
ブランド志向の強い日本人はすぐエリート教育に飛びつきがちだが、15~20万もの選手がプレーする高校サッカーを軽視するのは大きな間違いではないか。監督たちが100年近い年月をかけて、成功や失敗を繰り返しながら、いろんな特徴を持つ高校生を選手を育ててきた歴史と成果は、もっともっと尊重されていいはずだ。
サッカー選手の育成方法を考えるとき、つい先進的な海外に目を向きがちですが、日本にも高校サッカーにおいて蓄積されてきた独自のノウハウと実績があります。
才能あるサッカー少年はどうしてもJクラブに集まりやすいですが、現在の日本代表の中心選手の顔ぶれを見る限り、育成に関してはいまだ高校サッカーに一日の長があるように思われます。
トモニイコウ。
滝川第二の前監督である黒田和生氏の著書。
ヴィッセル神戸から「育成をベースにした地域密着型のチームをつくりたい。力を貸してもらえないか」と要請され、滝川第二の監督を退任するまでの23年間で、岡崎慎司、波戸康広、加地亮ら33人のJリーガーを育てた名将です。
本書より抜粋
サッカー部に入ってきた選手が辞めないで、もっとサッカーを好きになって、大学なり次のステージで頑張る、卒業したらもっとサッカーが好きになっている-そういう選手を育てることがほんとうの育成なのだ。
サッカーを楽しむことを大切にし、選手に自立的自由をあたえ、考える力を伸ばすことで世界に通用する「個」を伸ばす。黒田和生氏の育成に対する考え方は、極めて真っ当な正論なんですが、誤解を恐れずに言えば実に当たり前すぎることばかりです。
しかし、一歩引いて考えてみると、この当たり前のことを実践できている指導者や親がどれだけいるのでしょうか。まさに言うは易く行うは難しなんですよね。
サッカー指導にとどまらず、子どもとの関わり方を改めて考えさせてくれる一冊です。
蹴夢
高校・中学などのサッカー部取材を数多くこなすスポーツライター鈴木智之氏が、講談社の無料携帯サッカーサイト「ゲキサカ」にて連載した小説を一冊にまとめたものです。
元日本代表ストライカーを父に持つU‐16代表MF米倉ケンタ。進学先のサッカー強豪校、竹駒学園の天童監督のもと、「サッカーを教えない」指導に戸惑いながらも、練習への取り組み方やサッカーに対する考え方を学び、悩みながらも成長していく姿が爽やかに描かれています。
基本的にはフィクションですが、おそらく監督やコーチ、選手たちにはモデルとなる実在の人物が何人かいるのでしょう。
登場人物が基本的にみな良い人ばかりで、やや話がキレイ過ぎる印象はありますが、高校サッカーを疑似体験できるという意味では、これから進学する中学生のサッカー少年にとって多いに学ぶところがあるでしょう。
P134より抜粋
ポゼッションとは名ばかりの、消極的な横パスの連鎖が、日本サッカーが抱える病巣だと天童は考えている。図らずもそれは、結果や責任に対してあいまいな日本社会を象徴しているが、それを言い訳にしたところでなんの意味もない。
小説という形をとりながらも、日本人サッカー選手の課題であるゴールへの貪欲さや周りの空気を読みすぎる弊害などが描かれています。平易で読みやすい文章ですので、小学生高学年くらいのサッカー少年にも是非おススメしたい一冊ですね。
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以上TONELIKOでした。
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