自己破産や個人再生のデメリットのひとつに、「官報で広告されてしまう」ことがあるのはご存知かと思います。
しかし、実際のところ官報に破産情報が掲載されることには、どのようなデメリットがあるのでしょうか?
官報なんて、ふだん目にする機会はありませんから、ピンときませんよね。
結論から言うと、官報に破産情報が載ることのデメリットは2つしかありません。
- 銀行、消費者金融、クレジットカード会社、保険会社、および公務員への就職活動では、不利になる可能性がある。
- 家を借りにくくなる期間が長引く可能性がある。
「えっ、でも周りの人に知られてしまったりはしないの?」
その可能性はゼロではありませんが、まずありませんので安心してください。
この記事を読んでいただければ、官報とはどのようなもので、誰が官報を検索し、周りに知られることはないか、就職活動や家を借りる時どのような影響があるかが分かります。
官報とは
官報とは、ひとことで言うと「国の広報誌」です。
休日を除き、ほぼ毎日発行され、パソコンからもインターネット版官報からPDFファイルとして見ることができます。
おもに法律や政令・条約などのお知らせ、国や特殊法人の資料などを公表していますが、破産者の情報は号外の「広告 > 裁判所 > 破産、免責、再生関係」に掲載されています。
官報に掲載される内容は以下のとおり。
- 破産者の名前
- 破産者の住所
- 手続きをした年月日
- 手続きをした裁判所
国が発行する文書に、自分の名前がハッキリ公開されてしまうことのインパクトは大きいですよね。自己破産を躊躇してしまう気持ちは分かります。
官報に破産情報が掲載される時期と期間
官報に破産情報が掲載される時期は複数回あります。このように、自己破産と個人再生とでは、回数も時期もちょっと違います。
- 自己破産:「破産手続開始決定」「免責許可決定」時の2回
- 個人再生:「再生手続開始決定」「書面による決議に付する旨の決定」「再生計画認可決定」時の計3回
掲載される期間に関してですが、いちど官報に破産情報が載ってしまうと、その情報はずっと残り続けます。けっして消えることはありません。
ただし、インターネット版官報で、破産者情報を無料で見られるのは直近30日分までです。
官報の破産情報を検索する方法

では、このような官報の情報は、どうやって検索することができるのでしょうか?
官報の破産情報を検索する方法は以下のとおり3つあります。
- 図書館で調べる
- 無料の検索サイトを使う
- 有料の公式検索機能を使う
この中で、ちょっと注意したいのが「有料の公式検索機能を使う」ですが、順に説明していきますね。
図書館で調べる
多くの図書館には官報があります。なので、図書館で過去の官報を調べたりプリントアウトすることはできるでしょう。
とはいえ、わざわざ膨大な紙の資料から過去の破産情報を調べるのは、とてつもない手間がかかります。
また、図書館の中には、コンピューター端末による「官報検索サービス」を設置しているところがあります。
この官報検索サービスでは、「破産」や「再生」などのキーワードから検索することもできますし、過去数十年間の破産者情報も個人名を指定して検索可能です。
ですが、よほどの偶然でもない限り、あなたの知人があなたの破産情報を発見するとも思えません。
無料の検索サイトを使う
個人が作ったと思われる無料の官報検索サイトがいくつかあります。
ただし、情報源はインターネット版官報なので、検索できるのは直近30日間までとなります。
こちらも、さほど気にする必要はないでしょう。
有料の公式検索機能を使う
要注意なのが、官報情報検索サービスという有料の公式検索機能です。有料なので、まず一般人が利用することはないでしょう。
ただし、個人の信用情報を必要とする職業の方が検索する可能性はあります。
具体的には、税務署職員や不動産業者、弁護士・司法書士といった士業、金融業者などが挙げられます。
あなたの周りに、このような職業に就いている方がいる場合、なにかの拍子にあなたの破産情報を見つけてしまう可能性はゼロとは言えません。
破産情報を周りに知られてしまうことはほぼない

「破産情報を周りに知られてしまうのでは?」という疑問に対する答えは、上記のとおりです。
官報に破産情報が掲載されたとしても、あなた自身がバラさない限り、まず周りの人に知られる心配はありません。
ただし、可能性は小さいものの、税務署職員や不動産業者、弁護士・司法書士といった士業、金融業者といった、業務として個人の信用情報を検索している人に知られてしまう可能性は、ないとはいえないでしょう。
自己破産を理由に会社をクビになることもありません
「自己破産すると、会社をクビになってしまうんじゃないか?」
そんな不安をお持ちではないでしょうか。
これはまずありませんので安心してください。そもそも、上記のとおり官報に載ったからといって、自己破産の事実が知られることはまずありません。
弁護士や裁判所から連絡が来ることも一切ありませんので、自分から言わない限り、まずバレることはないでしょう。
万が一、知られてしまっても、会社はクビにすることはできません。
破産を理由に懲戒免職や解雇にすると、労働基準法の不当解雇に当たるからです。
労働基準法では、「企業側に解雇するだけの合理的な理由」がなければ労働者を解雇することはできないのです。
金融機関や公務員の就職では不利になるかも

つぎに気になるのは、将来の転職(就職)活動で、官報の情報を調べられて落とされてしまうんじゃないかということではないでしょうか?
結論からいうと、ほとんどの企業では大丈夫ですが、金融機関や公務員を目指すなら不利になる可能性があります。
順に解説していきますね。
履歴書の賞罰欄に記入する必要はない
就職活動で、企業に提出する履歴書には「賞罰欄」があります。この賞罰欄に、自己破産のことを記載する必要があるのか気になりますよね。
これは記載しなくても大丈夫ですので、安心してください。履歴書の賞罰欄に自己破産の事実を記載しなければならないという義務はありません。
もちろん、面接で伝える義務もありません。
ほとんどの民間企業への就職は問題なし
前述のとおり、官報の情報を無料で調査できるのは直近30日以内です。なので、この期間に就職活動をおこなうと、採用担当者の目に触れてしまう可能性はないとは言えません。
しかし、1ヶ月以上前の情報は有料なので、調べるには費用も手間もかかります。
ただでさえ、忙しい企業の採用担当者が、わざわざ有料の官報を使って、あなたの破産情報を調査するとは考えにくいです。
また、一般企業の採用担当者は信用情報機関のブラックリストにはアクセスできません。あなたの債務整理の事実は、まず知られることはないでしょう。
ですから、官報に破産情報が載ってしまったからといって、民間企業への就職において不利になることはありません。
金融機関への就職活動には不利になるかも
ただし、銀行、消費者金融、クレジットカード会社、保険会社といった金融機関への就職活動では、不利に働く可能性があります。
上記企業は、仕事柄、官報の情報にアクセスする機会が多いので、そこからあなたの破産情報が発見される可能性があるからです。
もちろん、必ずチェックされるとは限りませんが、そのようなリスクがあることは覚えておいてください。
なお、保険会社を除く銀行、消費者金融、クレジットカード会社には、信用情報機関へのアクセス権限があります。
官報を調べなくても、あなたの信用情報に傷がついていることがバレる可能性はあります。とはいえ、この点に関しては官報に掲載されない任意整理でも同じことです。
公務員への就職では官報を調査される可能性あり
官報の情報は、地方自治体や官庁などで共有されている可能性があります。
そのため、公務員への就職活動では、官報の破産情報を発見されて不採用となってしまうかもしれません。
自己破産者が公務員になることが禁止されているわけではありませんが、採用担当者の判断材料になる可能性があることは認識しておいてください。
したがって、将来公務員への就職を希望しているのであれば、自己破産や個人再生を選ぶのは、慎重になったほうがよいでしょう。
場合によっては、任意整理を選んだほうが良いかもしれません。
職業制限は3~6ヶ月くらいの一時的なもの
官報とは直接関係ありませんが、自己破産には職業資格制限があります。
自己破産の手続き中は、特定の職業には就けないということなんですが、一生その職業では働けないという意味ではありません。
あくまでも3~6ヶ月くらいの手続き期間中だけ制限されるということで、免責決定後は制限は解除されます。
ちなみに、資格制限のある職業は以下の通り。
弁護士 公認会計士 税理士 弁理士 司法書士 公証人 行政書士 国家公安委員会委員 都道府県公安委員会委員 公正取引委員会委員 検察審査員 不動産鑑定士 土地家屋調査士 宅地建物取引業者 有価証券投資顧問業者 証券会社の外交員 商品取引所会員 貸金業者 警備員 古物商 質屋 生命保険募集員 損害保険代理店 日本銀行の役員 旅行業者 卸売業者 建設業者 建設工事紛争審査委員会委員 風俗営業者
現在、このような職業に就いている場合は、手続き開始から復権(免責決定)までの間、その仕事を行うことができなくなります。
該当する方は、半年近く仕事ができなくなってしまうので困りますよね。
また、会社員の方は自己破産したことを会社に報告して、いったん別の職種に代えてもらう必要があるでしょう。
なお、個人再生の場合は、このような職業制限はありませんので、一時的でも制限されてしまうのが困る方は個人再生による債務整理を検討してみてください。
家を借りにくくなる期間が長引く可能性あり

最後に、官報に破産情報が載ることによって、家が借りにくくなる可能性について解説します。
信販系の保証会社は通らない可能性あり
最近では、賃貸借契約を結ぶ際に保証会社の保証をつけることが一般的になっています。
保証会社は、アプラスやジャックス、オリコなどの信販系も多いのですが、そのような信販系の保証会社は、CICやJICCという信用情報機関に加盟しています。
そのため、賃貸契約の際に、信用情報機関に個人情報の照会を行う可能性は高いでしょう。
債務整理をおこなって、信用情報に傷がついている(いわゆるブラックリスト)と、信販系の保証会社は保証を拒否するはずです。
そうなると、賃貸契約を結びたくてもできません。
任意整理との違いは期間
とはいえ、家を借りにくくなるのは任意整理でも同じことです。
任意整理の場合は、裁判所を通さないので官報に掲載されることはありませんが、信用情報に傷がつくことに変わりありません。
ただし、任意整理と自己破産・個人再生とでは、ブラックリストに入っている期間が違います。任意整理の場合は完済してから5年経過すれば情報は消えますが、自己破産と個人再生の場合、10年間は破産情報が残ってしまうんですね。
これは銀行系の信用情報機関であるJBAが官報情報を取り入れているからです。
JBAとCIC、JICCの三つの信用情報機関は、CRINという信用情報交流ネットワークでつながっているので、信販系の保証会社にも、あなたの破産情報は伝わってしまうんです。
結果として、自己破産と個人再生は10年間、任意整理は完済してから5年間は、信販系の保証会社の審査に通らない可能性があることは覚えておきましょう。
信販系以外の保証会社なら大丈夫
なお、不動産会社は信用情報機関に加盟できないので、不動産会社が賃貸仲介を拒否するということはありません。あくまでも保証の話です。
保証会社の中でも信用情報を閲覧する可能性があるのは、アプラス、オリコ、セゾン、ジャックスなどの信販系だけです。信販系以外の保証会社、全保連やカーサ、日本セーフティなどは、信用情報を見ることはありません。
信販会社の保証審査に落ちても、不動産会社によっては他の保証会社を紹介してくれるところもあります。
デメリットが大きいなら任意整理の検討を!
「官報に破産情報が載ってしまう!」というと、一生が台無しになってしまうような不安を感じてしまいますよね。
でも、決してそんなことはないことがお分かりいただけたかと思います。
結論としては、官報に破産情報が載ってしまうことのデメリットは、「公務員や金融機関への転職活動で弾かれる可能性がある」ことと「家賃を借りにくくなる期間が長引く可能性がある」ことです。
一般的な民間企業では、まず官報の破産情報を知られることはないでしょう。
官報は一般人には馴染みのないものなので、自分から言わない限り、周りの人に自己破産がバレる可能性も極めて低いです。
ただし、置かれた事情によってデメリットの大きさは違いますので、もし「このデメリットは大きすぎる」と思われるのであれば、任意整理も検討してみてください。
また、詳しいことは専門家に相談するのが一番です。無料で相談に応じてくれる弁護士や司法書士もいますので、一度そちらから相談してみるとよいでしょう。
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